書店の中につくられた特設会場へ出て行くと、あたしの思っていた以上の人数がそこに整列していて、正直びっくりした。
握手会に参加できる人数には限りがあって、その定員は100人。
さらには、発売されている写真集の中にランダムに封入されているチケットがなければ、参加したくてもできない。
そんなメンドクサイ工程を経てまであたしに会いに来る人なんて、100人もいないでしょう……
そう、思っていたのに。
「ココちゃんだ!」
一番にあたしの姿に気付いた誰かがそう叫べば、会場が揺れるんじゃないかってくらい盛り上がってはしゃぐ参加者の人たち。
すごい……この人たちがみんな、あたしと握手しに来てくれたの?
あたしはファンの熱ってやつを目の当たりにして、今まで感じたことのない嬉しさが湧きあがってくるのを感じた。
……けれど。
実際に握手会が始まると、一人一人と話せる時間は意外にも短いんだと気付かされた。
流れ作業的に手を握って、「ありがとう」って微笑んで、また次の人……
100人と握手しなきゃいけないんだから当たり前かもしれないけど、ちょっと寂しい。
それでもたまに、すごく気合の入った高校生くらいの女の子が「いつも雑誌見てます! ココちゃんのコーデ大好きです!」――なんて、目をきらきらさせながら言ってくれると、すごく励みになったし、ちょっと泣きそうにもなった。
あたしの出ている雑誌を買って、そのコーディネートを参考にしてくれてる。
それをこんな風に実感できることって、なかなかなかったから。

