賢人が俺をバカにするのはいつものことだけど……それ以外に、誰のこと言ってるんだ?
「……ココちゃんと仲良いあのメガネっ子に聞いたんだけど。その絵に仕掛けあるんだってな」
この部屋の後ろに立てかけてある壁画をちらりと見て、賢人が言う。
「……仕掛け?」
「論より証拠だ。これ、使えよ」
賢人が俺の方に放り投げたのは、小さな懐中電灯。
こんなもんで何を……と思っていると、賢人は窓際のカーテンを手際よく閉めきり、教室内を薄暗い状態にする。
「その絵に光当てて見えるもの……俺はお前が見なきゃ意味ないと思うんだ。
けどあのメガネっ子、“真咲くんには見せないって言うのがココちゃんとの約束だから”とか言って、お前に教えるつもりなかったみたいで……
だからそのライト奪って、俺はお前を待ち伏せてたわけだ」
「……よくわかんねぇんだけど」
「っだーもう、早く見ろよ! 確か、いちばん右端の下の方とか言ってたぞ」
なんでお前がキレてんだよ……
つーか、全く意味がわからない。
仕掛けって?
これに光当てて、一体何が見えるって――――
目を凝らしてみると、ライトをかざした先に、絵とは全く無関係っぽい文字がぼんやりと光っている。
へえ。こんなの、いつの間に……
言われるままにそれを読んだ俺は、次の瞬間大きく目を見開いた。
これ……
「それ。ココちゃんがお前に一番言いたいこと、だってよ」

