スセリの花冠

……妹…。

愛世はこちらを見ようともしないディアランの態度に傷付いた。

妹……。

妹。

ショックを受けた心の真ん中から、こんどはたちまち怒りが芽生え、愛世は涙が出そうになった。

どうして嘘をつくの、ディアラン。

その時ディアランにしがみついていた女性が、艶やかに笑った。

「まあ……妹君でございましたか。ではご一緒に昼食などいかがでしょう」

「私は結構です。さようなら、お兄様」

愛世は一言ディアランにむかってそう言うと、勢いよく踵を返した。

風が髪を乱し、それが余計に愛世を惨めな気持ちにさせる。

なにが妹よ。全然似てない。似てないわ!

さっき来たばかりの道を引き返しながら、愛世は唇を噛み締めた。

不潔よ、不潔だわ!

込み上げた怒りは消えず、悲しみとごじゃ混ぜになり愛世の胸をいっぱいにした。

それが溢れると同時に涙もまた頬を伝う。

愛世はボロボロと泣きながら歩いた。

どうして、どうして、どうして!!

なぜあの女の人と抱き合ってたの?!

なんであんな風に乱れてキスしてたのよ?!

俺じゃダメかって私に訊いたんじゃなかったの?!

私が好きじゃなかったの?!

そう考えた瞬間、愛世は胸から炎が生まれて全身に広がり、焼け死ぬような思いがした。