分からず屋!

分かっているから言ってるんだ。

引きたくない思いで互いに睨み合っていたが、やがて愛世がポツンと言った。

「じゃあ……せめて、リリアが帰ってくるまで」

「……いいだろう」

ディアランは渋々頷いた。

少しは譲歩しなければ、俺が嫌われる。

嫌われては元も子もないのだ。

気まずい朝食が終わり、立ち上がるとディアランは愛世に向かって両手を広げる。

「アイセ」

「……」

いつもと同じように愛世を抱き締めようとしたディアランを、彼女は一瞥した。

「今日はしないわよ、ハグなんて」

「……アイセ、待」

「……ふん」

少し顎をあげてツンとした表情を作ると、なんと愛世はすぐ脇をすり抜けて行ってしまったではないか。

…!!

俺が悪いのか?!

ディアランは、溜め息をつくと天を仰いだ。

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「アイセ、あったぜ!」

近衛兵の宿舎の石段で待っていると、セロが女物の靴を一足、顔の高さまで持ち上げて走ってきた。

「良かった!ありがと、セロ!」

愛世はセロにハグをし、靴を受け取った。