「……こんなに暗くなるまでどこにいたんだ」

愛世の身体が再びビクッと震える。

張り付いたようにディアランを見ながら、愛世は思案した。

機嫌悪そう…どうしよう……。

上手い言い訳が思い浮かばず、愛世は小さな声で答えた。

「ちょっと……掃除に…」

「セロに頼まれたのか」

「頼んだのは私よ」

そう答えながらも、ふと疑問が生まれた。

「なんでセロがでてくるの?」

「っ!」

急に質問を返され、今度はディアランがギクリとする。

「そ……れは」

「そう言えば掃除仲間のフェリスが、背が高くてフードを被った男に私のことをきかれたって…」

しまった、口止めするのを忘れていた。

「……」

「……」

愛世はつかつかとディアランに近より、彼の赤茶の瞳を見上げた。

「ディアラン……後をつけたのね?」

「あ……」

女性に大人気の策士も形無しである。

愛世はディアランを睨んだが、決まり悪そうな顔が何とも言えなくて思わず吹き出してしまった。

いつもは大人でカッコいいディアランが、いたずらのバレた子供の様でたまらなく可愛かったのだ。