大抵は腰を抜かさんばかりに慌てふためき、会話が成立しない。

しかし次の瞬間には愛世を気の毒に思った。

この女は自分の死期を悟っているのだ。

だから神を見たとて心が乱れぬのだ。

須勢理姫は愛世に語りかけた。

「アイセ。私は須勢理姫です」

すせりびめ…。

愛世は須勢理姫の鈴のような美しい声に驚きながらも、返事をした。

「はじめまして、須勢理姫様」

それからこう言うと、柔らかく笑った。

「須勢理姫。私……もう死ぬのですね」

言い終えて愛世が須勢理姫を見つめると、須勢理姫の珊瑚の耳飾りがシャラリと横に揺れた。

「私はそなたを迎えに来たのではありません」

「……え?」

……迎えに来たんじゃないの?私、もうすぐ死ぬんじゃ…。

戸惑う愛世の前で、須勢理姫は静かに話した。

「確かにそなたの命はさほど長くは持ちません。私はそなたを哀れに思い、何か願いを叶えてあげようと天上界から参りました」