愛世は一言も言葉を発することなく、ただただアルファスを見つめた。

何か言おうとすると、先に涙が出てしまうだろう。

それだけは嫌だった。

そんな愛世の様子に、アルファスから笑みが消えた。

表情は今にも泣きそうであるが、泣くまいとしているのが見てとれる。

……泣かないのか?何故だ。

「……!」

その時だった。

アルファスは信じられない思いで愛世を凝視した。

これは……この服は……昨日俺が引き裂いた物だ。

アルファスが引き裂いた胸元は、同じ色の糸で綺麗に縫い直してあった。

どうしてだ。こんなもの直さなくてもディアランに言って新しいものをもらえばすむだろう?

何故だ。

アルファスは、かすれた声で呟くように問い掛けた。

「……縫ったのか。何故新しいものを着ない?」

愛世は震える声で答えた。

「縫えば……まだ着られるから。もったいないから……」

急に胸が息苦しくなり、アルファスは身を翻した。