どうしてか、腹立たしい。

「…お前は…そんな眼を男に向けて、何を期待してるんだ」

「…え…?」

意味が分からず戸惑う愛世に、突然アルファスが腕を伸ばした。

「あっ」

それから片方の手で愛世の首を掴んだかと思うと、斜めに顔を近づける。

「やっ……!」

唇が唇に触れるギリギリで、アルファスは愛世の眼を見た。

………!

アルファスを見るその瞳が、恐怖で潤んでいる。

「……動くな」

「いやっ……」

濡れた漆黒の瞳に、アルファスは自分を抑える事が出来なかった。

ゆっくりと愛世にくちづけをし、その唇を味わったのだ。

……どうせまた昨日のように、ギャーギャーと叫び立てるんだろう。

暫くの後、愛世から顔を離すとアルファスはニヤリと笑った。

一方愛世は、アルファスにキスをされて泣きたい気分だった。

泣きたくなったが、グッと堪えて泣かなかった。

愛世はこれを罰だと思ったのだ。

昨日の自分への罰。

こうして自分が傷つけられたように、昨日アルファスを不愉快な思いにさせてしまった代償。