……嫌われてる、私。

王様に嫌われるなんて…凄くこの国に居ずらい。

愛世はどうしていいか分からずに、ひたすら瞳を伏せ続けた。

それからこう思った。

ここは……アルファスの国だ。

よくよく考えると見ず知らずの女が急に現れて、近衛兵隊長の客というだけで城内の屋敷に住み、王に悪態をつくなど無礼千万である。

愛世はアルファスの気持ちになって考えようとした。

……確かに、あの時の私は言い過ぎたかもしれない。

ここは平和な日本じゃないし、不安定な世界だとしたら……私は不審者同然だったのかも。

やっぱり、私の方が間違っていたんだわ。

愛世は決心すると大きく息を吸い込み、顔をあげてアルファスを見つめた。

「王様。昨日はひどい事を言ってごめんなさい」

するとアルファスは、ほう、というふうに眉を上げた。

「昨日とはうって変わって謙虚だな。今度は王である俺に直接取り入ろうと考えたのか」

言い終えた眼にはまだ、嫌悪の光が浮かんでいる。

愛世はその言葉に胸がズキッとして息をのんだ。

そんな愛世をアルファスは舐めるように眺めた。

艶のある黒髪と形のよい輪郭。

憂いを含んだ大きな黒い瞳は、何事も真から見据えようとしているかのようだ。

アルファスはそんな愛世を見ているうちに次第にイライラしてきた。