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本城愛世は閉じていた眼をゆっくりと開けた。

病室のベッドに横たわっているにも関わらず、身体がグルグルと回転しているような感覚が治まらない。

点滴で強い薬を体内に流し込んでいる為に、吐き気、頭痛、目眩の総攻撃をくらい、心身ともにもうボロボロである。

「死にそう……」

愛世には家族がいない。

両親は去年事故で亡くなり、愛世だけが奇跡的に助かったものの精密検査の結果、病気が見つかったのだ。

父の妹である可奈子は、涙にくれながらも愛世を抱き締めて励ましたが、愛世は両親を亡くしたショックと自分の身体に見つかった病気に絶望し、何も考える事ができなかった。

私、死ぬんだろうな。

愛世は病室の天井をぼんやりと見つめながら思った。

可奈子おばさんはいくら尋ねても病名を教えてくれなかったけど……何だか治りそうじゃないわ。

愛世はおぼろ気ながらに自分がもうすぐ死ぬんだろうと予感していた。

「…まだ女子高生なのに、もう死んじゃうなんて」

実際に口に出して言ってみたがさほど死が怖いわけでもない。

何故なら両親も死んでしまったし、いくら若くても死ぬ人はいるからだ。

家族はもういないし、入院ばかりで友達にだって会えない。

「なんにも良いことないじゃん」

瞬きもせず天井を見たままそう呟いた時である。

なんの前触れもなく、病室の天井がグニャリと大きく歪んだ。