スセリの花冠

近衛兵でありながら都を離れ、山賊狩りを命じられた時は正直、王に噛みついたが……今となればそれも悪くなかった。

何故ならこんなに可愛く、魅力的な女を見つけられたのだから。

焚き火の炎が愛世の横顔を照らし、愛世を更に神秘的に彩っている。

そんな愛世に、ディアランは胸が高鳴るのを感じた。

…どうやら俺は、本気でこの女を自分だけのものにしたいらしい。

さて、帝国きっての策士としては、どこから彼女を切り崩すべきか。

ディアランは月に眼をやりながらこう思った。

いつものやり方では通用しまい。

そんな予感に胸が浮くようで、ディアランは少し微笑んだ。


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愛世は本当に兵達に紛れて眠り込んでしまった。

一方ディアランは、隊長専用のアクヤへとひっこんだものの、その僅かに開いた幕の隙間から、愛世を見守り続けた。

酒の入った兵達の間で女がひとりで眠るなど、危なくないわけがない。

だが兵達は、愛世をどうにかするなどという気は全くなかったようだった。

当たり前である。

隊長であるディアランが自ら面倒をみようとしている女に、手出しする部下などいるわけがない。

何故なら部下達は、ディアランを尊敬し慕っている。

彼もそれを知っており、皆を可愛がっていた。

いや、そういう事ではないのだ。