スセリの花冠

そんな事をしたら私を生んでくれた両親や、須勢理姫にだって申し訳ない。

愛世はディアランに、自分の気持ちを言わずにはいられなかった。

「あなたと同じテントで二人きりで眠るより、月夜の下でみんなと語りながら夜を明かすほうが断然楽しいわ。それに私はあなたが思っているような女じゃない。一夜の相手なら他をあたればいい」

言い終えると愛世はクルリと踵を返し、本当に兵達が酒盛りをしようとしている輪の中へストンと腰を下ろした。

「あっ、おい、女……いや、アイセ」

兵達はそんな愛世に狼狽え顔を見合わせていたが、愛世は気にすることなく隣の兵士に話しかけ、兵士もまたその問いに答えて、ぎこちなく笑った。

……本気なのか?

ディアランは、そんな愛世を呆気に取られて見つめ続けた。

なんだ、この女は。

兵達は最初、立ち尽くしてこちらを見つめるディアランに遠慮気味であったが、次第に愛世に魅了され、やがては焚き火を囲んだ輪が更に大きくなり、それにつれて弾けるように笑い出したり踊ったりして、ディアランの視線を忘れてしまう程であった。

しかも兵と共に焚き火を囲んで笑い合っている愛世は実に自然で、兵達もいつの間にか、

「アイセ、酒はどうだ?!」

「私、まだ飲んじゃダメなの」

「アイセ、もっとお前の国の話を聞かせてくれ」

「いいわよ」

「アイセ、歌をうたおう!」

……どうなってるんだ。

…俺よりも人気者じゃないか。

ディアランは、またしても苦笑した。