入院していた時は諦めていた。

でも今は恐い。ううん、死が恐いんじゃない。

ディアランと離れるのが恐いんだ。

彼に触れられないなんて嫌。

あの声、あの綺麗な瞳を見つめられなくなるのが恐い。

愛世は自分を抱き締めると、声を殺して泣いた。


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どれくらいそうしていただろう。

しばらく泣いていたが、愛世はゆっくりと顔をあげると空を仰いだ。

沈みゆく太陽が辺りを赤く染め、今日をなし終えようとしている。

日は沈み、また明くる朝、昇る。

泣こうが叫ぼうが、それはずっと変わらない。

そう思うとなんだか立ち止まっている時間が勿体無く思え、愛世は大きく息をついた。

いつの間にか涙は止まっている。

…人間っていくら悲しくても、泣き気続けるなんて出来ないのね。

愛世は頬に残る涙を拭うと立ち上がった。

よく考えたら、泣いている暇なんてない。

だって私にはもう時間がないんだもの。

そうよ。最後の最後まで精一杯生きよう。

愛世は再び深呼吸をすると、目指す方向へと歩き出した。