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満月の呪いから二日後の午後、愛世にようやく歩く許可が降りた。

相変わらず身体中が痛かったが寝てばかりもいたくなかったので、宮殿を出て南へ数分の距離にある池へと足を進める。

池のすぐそばある石段に腰かけると、愛世は太陽をキラキラと反射する水面を見つめた。

綺麗……それから、嬉しい。

無意識に笑みがこぼれたのは、愛世の胸にディアランの顔が浮かんだからだ。

恋が、実った。

叶った恋の相手がディアランだという事が、本当に嬉しい。

でも……。

嬉しさの分、切なさが込み上げる。

……そうだ。

私は……もうすぐ死ぬ。

もともと短い命だった。

そんな私を須勢理姫が異世界に。

恋がしたい。そんな私の願いを、須勢理姫が叶えてくださった。

こんなに素敵な恋を、私に。

分かってる。高望みはしちゃいけないって。

でも、でも……!

ギュッと胸が痛んで、それをきっかけに顔が歪む。

悲しみに耐えられなくなり涙がみるみる流れて落ちた。

ディアランと、離れたくない。

私……死にたくない!