じっと見つめると、彼らは弓を構える為の壁を指差したり神殿の屋根付近を見上げたりと、どうやら警備の打ち合わせをしているらしかった。

しかもどの近衛兵も鎧の頭部に隊長の印である緑の羽根飾りをつけている。

……隊長ばかりがいるということは、各部隊の持ち場を分担するための打ち合わせかも知れない。

愛世は神殿へ入るのを諦め、そのまま後ろへ数歩さがるとソッと踵を返した。

……今日は……やめておこう。

だってディアランが来たら気まずいもの。

会ったら……泣いてしまうかも知れない。

愛世がそう思いつつ、元来たばかりの道を引き返そうとしたその時だった。

「っ!」

「……、」

驚きのあまり、ふたりの足が止まる。

なんと数メートル先の距離で、こちらへ歩いてくるディアランと鉢合わせてしまったのだ。

愛世は均整のとれた逞しいディアランを見て、胸が締め付けられた。

端正な顔立ち、赤茶色の涼やかな眼。

それが全てあの女の人のものだと思うと、胸を撃ち抜かれたように痛い。

一方ディアランは、可憐で美しい愛世に眼を奪われて立ちすくんだ。

屋敷で女といるところを見られてから、ディアランは愛世と会っていなかった。

愛世と住んでいたのがもうずっと前のように感じ、彼女が今、アルファスのいる宮殿の一室に住んでいると思うと焦げ付くように胸が痛い。

固い表情のディアランを見て、愛世は一生懸命自分の気持ちを抑えようとした。