無垢な瞳

クラスのみんなに提案する前に、コウが歌声とボディパーカッションの鳴る中ピアノを演奏できるかどうか確かめようと思った。

沢村先生の意見を求めるのがいちばんの近道だろう。

「僕たちのクラス発表にコウは参加できると思いますか?」

沢村は迷っているようだった。

なかなか口を開かない。

「わからないわ。賭けみたいなものになるわよ」

「賭け?」

「私だってコウくんの全てを把握しているわけではないからね」

沢村はそう前置きをした。

沢村だって、コウが転校してきてからの付き合いだ。

コウに対しては手探りで接しているといってもよい。

「人の声って単純に一人じゃないでしょ。四十人もの歌声で、しかもパート別に違うわけだから、コウくんの反応が予測できない」

「やめたほうがいいってことですか?」

「まさか。うちの子たちにとっても願ってもないチャンスよ」

沢村の顔が輝いた。

「タンポポの子が普通学級の子どもたちと一緒にステージに立つ。しかも学校主体でなく、子どもたちからの提案としての実現なら、なおさらだわ」

確かにタンポポの子どもたちは普通学級の子どもたちと隔たりというか、その間に見えない壁のようなものがあるとケンも感じていた。

結局当たらず触らずというか……無難な建て前的な関わり方しかしてきていない。

「それじゃあ‥‥」

「ええ、やってみましょう」

沢村はゴーサインを出したが、こうも付け加えた。