「おばさん、これはビジネスだからね。コウの才能に投資するの。だからなんの恩義も感じることないの」

「だって、アキちゃん……」

「私ねこっそりいろんなところに手を回してきたの。だから脇を固めるスタッフは万全よ。おばさんもコウも何も心配することない」

「スタッフ?」

「そう。コウの特性を理解している専門スタッフも入っているの。それに……」

「それに?」

「そう、それに、コウのいちばんのファンでコウのこと理解している人も……」

コウの母親の表情が固まった。

「アキちゃん、その人ってまさか……」

「そうよ。そのとおり!」

アキがおどける。

コウの母は涙にむせぶ。

「八年の間、私たちのんきに遊んできたわけじゃないわ。私もケンもそれぞれの夢に向かって努力してきたの」

「なんて、なんて言ったらいいか……」

コウの母は微笑んでいた。

聖母マリア像の微笑みそのものだ。