「親の都合であんたには迷惑かけたわ。いやな思いもいっぱいしたでしょうに。ごめんね」

幸がそんなことをアキに言うなんて思いもしなかった。

いつも自信満々に肩で風を切って歩く母。

まずは仕事ありきの人で、家庭はいつも二の次だった。

お世辞にもいい母親とはいえなかった。

そんな母が、アキのことを気遣い、あやまっている。

もしかしたら私はこの人に愛されているのかもしれない。

そう思ったら自然に涙がこぼれた。

「やあね、泣かないでよ。あんたに泣かれちゃうとどうしたらいいかわからなくなる」

幸は立ち上がった。

そしてアキの隣に座った。

「本当は知ってるの。こういうときどうしたらいいかって」

幸はアキの肩を抱き寄せた。

幸はタバコのにおいがした。

「タバコくさいよ。全然母親らしくないんだから」