「ケン、ちょっと‥‥」

芝山先生がケンを呼び止めた。

「先生、どうしたの?」

芝山の青ざめた表情からケンもただならぬ事情を察してはいた。



芝山は歓声に渦巻く会場から、今日の主役の一人をそっと連れ出す。

渡り廊下を通り、校舎に入ってドアを閉めた。

暗く、しんと静まり返った廊下。

芝山とケンの二人だけしかいない。



「ケン、いいか、落ち着いて聞いてくれ」

「はい?」

芝山はケンの両肩をしっかり支えながら言った。



「お母さんが亡くなられた」



「先生‥‥」




「ケン、大丈夫か?」