その赤い靴は

つるつるしていて

ちょっと派手で

まるで他の靴から嫌われているように

ひっそりと置いてありました。



さっちゃんは恐る恐る近づいてみると


 こんにちは、さっちゃん。


なんと

その赤い靴が

さっちゃんに話しかけてきたのです。



さっちゃんはびっくりして

「こんにちは。私に話しかけているのはあなた?

どうして私の名前を知っているの?」

と、ちょっと早口で聞いてみました。


 そうよ。

 私があなたに話しかけているのよ。

 私、あなたのことなら何でも知っているの。

 だってお友達になりたかったのだもの。

 ずっとあなたを見ていたわ。

 私、何年も何年もここにいて

 ずっと一人ぼっちだったの。

 お友達なんて一人もいないわ。


と、赤い靴はさみしげに言いました。

「ずっと一人ぼっちなの?お友達、いないの?」


 そうよ。

 誰も私とお友達になってくれないの。

 きっと私が派手すぎなのね…。
 
 ねぇ、さっちゃん。

 私さっちゃんがとても好きなの。

 私とお友達になってくれないかしら?

 お友達になってくれたら
 
 素敵なところへ連れて行ってあげるわ。

 素敵な靴は素敵な場所へ

 連れて行ってくれるものなのよ!


実はさっちゃんも

この赤い靴が好きになっていました。

ちょっと派手だけど

ピカピカしていてきれいな靴なのです。



それに

お話ができる靴になんて

今までで一度も出会ったことないですもの。



「赤い靴さん。あなたは素敵ね。

私もあなたとお友達になりたい!」


 うれしいわ!ありがとうさっちゃん。

 じゃあ早速私を履いて。
 
 素敵な場所へ連れて行ってあげる。