そう

まわりは一面真っ白。



そこには

さっきまであった太陽や雲

空までもが消えていました。



「私、なにもかも食べてしまったのだわ。

どうしよう!なにもかもなくなっちゃった。」



さっちゃんが泣き出してしまうと

赤い靴が言いました。

 
 泣かないで、さっちゃん。

 何もないなら

 さっちゃんが作り出せばいいのよ。


「どういうこと?」

 
 人差し指を上にむけて…


さっちゃんが人差し指を上に向けると

赤い靴は走り出しました。

もちろん

赤い靴を履いているさっちゃんも走ります。


 ほら、さっちゃん。上を見て。


さっちゃんが上を見ると

なんと人差し指から赤い線が出ていました。

次はピンク

次は黄色

次は緑

次は…



あっと言う間に虹がかかりました。

さっちゃんが人差し指で描いたのです。



「素敵!」

さっちゃんはどんどん描きました。

白い雲

お日様

おうちやお花

車や猫

犬もうさぎも…



どんなに描いても

白い空間はなくなりませんでした。

どこまでもどこまでも

果てしなく続いています。

どこまでもどこまでも

赤い靴が連れて行ってくれます。



「こんなに絵をかいたのは初めてだわ。

私、いつもおうちの壁に絵を描いて

きれいにしようと思うんだけど

描くとママに怒られるの。」


 そう…。ママっていじわるなのね。


「うん。

壁にお花とか描いたら

絶対きれいだと思うのになぁ。

ママはダメっていうの。」


 ここなら

 どんなに描いても誰にも怒られないわ。

 そうだわ

 それならママのことなんか忘れて

 ずっと私と一緒に遊んでいましょう。

 その方がずっと楽しいわ!