弟、時々恋、のち狼


「うん?」


まばたきの音さえ聞こえてきそうなほどの距離。
ロウは、静かな微笑みを浮かべていた。


「いいよ?」


無理に言わなくて。

彼は、ふっと瞳を和らげる。


「目を、閉じて。
心の中で話してごらん」


落ち着くためのおまじないか何かかな……?


諭すような、先生らしい口調に、アタシは大人しく従った。
……目を閉じた顔をヒトに見られるなんて、恥ずかしいけど。


「一度深呼吸して、穏やかな気持ちで考えてごらん」


じんわりと、耳に心地良いロウの声。


………………。

夢を見るんです。
妙な、夢。


そう思うと共に、いくつかの場面が相変わらずの生々しさで浮かんできた。

化け物。

戦争。

別れ。

重苦しい場面ばかりだ。


……あぁ…………いやだ…………。