弟、時々恋、のち狼


「何があったの?」


その思いがけず優しい声と、心配そうな表情に、気持ちが揺れた。

突然涙がこみ上げてきて、アタシは慌てて顔を伏せる。


赤ちゃんみたいだ。
わけもわからず泣くなんて。


「話してみてよ。ね?」


慰めるような暖かな声が、大人の落ち着きを感じさせる。
柔らかな響きが、凍えた心にじんわりと染み込み……。

困惑に、拳を固く握った。

だって……余計、涙腺が刺激されてしまうから……。

よくわからない相手の前で、よくわからない涙を流すなんて。

うるんだ目元を隠して、万が一にも嗚咽が漏れることのないよう、必死に唇を噛みしめる。