弟、時々恋、のち狼


「寂しかったよ」


ふいに、ぬくもりを感じた。

驚きのあと、ようやく、頭と背に力強い腕がまわされていることに気づく。


「ちょっ……!!」


またしても、アタシは突然、胸板に顔をうずめ、抱きすくめられていた。


「やっと会えたのに、嬉しくない?」


授業の時とは違う。
聞き覚えのある、甘く切ない響き。


やっぱり……。


アタシは、もがきながら確信していた。

面倒くさいような、怖いような……
それでいて、体の芯が熱く震える。


「……ロウ……?」


思わずもれた名前に、腕がゆるんだ。

茶色い瞳が、アタシの目をジッと見つめる。


「愛してる」


感極まった、とろけるような声だった。

なんでここにいるの、とか、何者なの、とか。

聞くべきことはたくさんあるのに、突沸し慌てた頭は、やっぱり働かない。