弟、時々恋、のち狼


顔なんか、当然、見られるはずがない。

……まぁ……いろんな意味で。


「は?」


何言ってんの?

返されたのは、そんな感じの、そっけない口調。


謝ってるのに……ギリギリだけど、遅刻はしなかったのに……何もそんなに怒らなくったって……。

アタシが悪い。
それは知っているけど、ここまでくるとなんだか理不尽さえ感じる。


「…………。」


改めて謝るのもためらわれ、黙って、伏し目がちに立ち尽くす。

恥ずかしさと後悔と悔しさとが、複雑に混ざり合ってアタシの気持ちを重くした。


「…………よ」


え?


何かが微かに聞こえたような気がして顔を上げた。

険しい表情。

おいで。と、手招きされ、恐る恐る、残りの少しの距離を縮める。

まさか殴られたりはしないだろうけど。
叩きつけられるだろう辛辣な言葉を覚悟した。