弟、時々恋、のち狼

「たきがわみふう」


名前を呼ばれた気がした。

きちんと意識に入ってこなかったけれど、今、耳を通り抜けて行った音を改めて再生してみると……たぶん。


「はい……」



蚊の鳴くような声で返事をし、わずかにあげた視線で先生を見た。

順番は合っていたらしい。
先生は名簿を見ながら小さくうなづいている。


…………!?


え!?


また目を伏せようとした瞬間。
あまりの驚きに、思わずアタシは先生を凝視した。


なんで!?


なのに先生はそんなアタシの視線に気付く気配もなく、どんどんと名簿順に名前を呼び続けている。


…………アレ……って……。


まさか……?

いや、たぶん……。

ううん、きっと……。


なんてことだろう。