「先生、さようならー」


それぞれに着替えを済ませ荷物片手に校門に向かうと、ちょうど、音楽のシロウ先生が正門を閉めるところだった。
諦めて通用門にまわろうとしたところを「まだ大丈夫」と言ってもらい、ツカサと二人、小走りに駆け抜ける。


「やっぱりカッコイいなぁ」


すらりとした柔和な若い男性教諭は、女子生徒の人気の的だ。
アタシも例に漏れず、音楽の授業を楽しみにしている。


「あ、ミフウさん、明日の当番よろしくねー!」


追いかけてきた耳に心地良い声に、振り返って大きく手を振る。
明日はアタシが音楽の授業でピアノの伴奏をする番だ。シロウ先生のすぐ近くで授業を受けられるから、なんだか得した気分になれて、アタシはしょっちゅう伴奏の役を買って出る。


「おまえ……ピアノとか練習してる暇あるなら、英単語の一つでも覚えろよ……」


しつこく手を降り続けるアタシに、隣から不機嫌な声がかかる。