弟、時々恋、のち狼


「アタシ、ツカサくんとは何にもナイよ?」


本心をアピールしたところで


「またまたぁ」


笑ってあしらわれる。

……どうしたものか。


「あ、ところで、数学の宿題やった?」


「あ!!やば!!」


逡巡していると、ふと時計に目をやった一人のおかげで、驚くほどあっさり、話題がかわった。

そういえば、宿題、アタシもまだ途中までしかやっていない。

渡りに船、なのだけれど、これまた嫌な話題になってしまった。


「今日って誰からあたるんだっけ?」


「えっと……昨日、窓側からあたったから……」


お弁当箱をパタパタと片付けながら、みんな、意識はすっかり5時間目にむいている。


「あ、しかも今日、クラブじゃない?」


「そうだよー。なんなんだろね。高校生にもなってさぁ、部活だけでイイじゃんね」


すっかり、忘れてた。


月に一回ある、クラブ活動。
任意参加の部活動とは違って、こればかりは全員参加。

選択授業の一環みたいな位置付けらしい。


エプロン、あったよね?


廊下のロッカーの中を思い浮かべる。
アタシの入った家庭科クラブは、今日は調理実習の日。ドーナツを作る予定だ。