なんて強引な……。

あの日、一目惚れとも言うべき引力を感じたこと、いまでも鮮烈に覚えている。けれど、ついてくると決めつけているような傲慢な態度に、少なからず苛立つ。

なのに、慣れないことに動揺したアタシの心は、苛立ち以上に、足の速いツカサを見失わないようにしなくてはという焦りに占められていた。


人通りの多い道から脇道に入り、さらに、河原の遊歩道に続く階段を下る。
その足取りに迷いはない。


「ちょっと……待ってよ……」


虚しいと知りながら、独り言を呟く。

颯爽と歩くツカサとは打って変わって、パタパタと小走りについて行くアタシはすでに息が切れ始めていた。
かなり必死。

なんでアタシがこんなコト……。
思う反面、だからといってやめることもできない。

黙っていなくなるのはやはり気が咎めるし、ついて行けないと思われるのも癪だ。

清々しい朝の空気の中、小鳥の声を聞く余裕もなく、ひたすら、歩く。

整備された花壇。咲き並ぶ水仙。
犬の散歩を楽しむ人たち。

ツカサがようやく立ち止まったのは、ゴツゴツした石ころの川縁を渡った先、普段は中州だろう木立の中だった。