弟、時々恋、のち狼

     ※


「ミイさま!ロウさまっ!」


明るい声が長い廊下に響いた。

長く青みがかった女官衣装をひるがえしなが、ラッラが走ってくる。


「3日ぶりですわね!」


もともと、四六時中一緒にいたわけではない。
それでもやはり、主と女官として別れてしまうと、養い子とみていた頃よりもずっと、遠い存在になってしまった。


「カッシ湖まで塩をとりに行って、ついさっき戻ってきましたの」


あどけなさの残る顔をほころばせ、自慢げに胸を張る。


「そうみたいだね。道中、危険はなかった?」


ラッラが8歳の時だった。
女官長が、ラッラに女官修行をさせたいと言い出した。

神だ賢者だと崇められる姉弟の可愛がる子とはいえ、元々は素性の知れぬ迷い子。身の回りのことをこなせるようになった今、ただ置いておくわけにはいかない。

それが彼女の主張だった。