弟、時々恋、のち狼


可愛いラッラ。

戦乱のなか迷い込んだ、かけがえのない子。


私たちの浸った水は、不浄を拒否する。
少なからず、命を守る恩恵となる。


本当は……こんなことするべきではない。


わかっていた。


私たちは見守るだけの役目。
見守るだけの……。


記録する弟に、清める姉。


手を出してはいけない。

この時の流れに生きるものに関与するなどは、許されない。


誰より強く、自分自身がそう知っている。


なのに。

転がり込んだはかない命が、すべてをガラリと変えてしまった。


今はもう--。


人に近い、我ら。

笑い、悲しみ、怒り。

この身に、感じてしまった。


--戻れない。


以前の自分には。

だが、後悔は何もなかった。

人の気持ちをもち、今の私たちは幸せだから。


「これ、あげる」


乾いた衣に着替え、美味しそうにスープを飲んでいたラッラが、思い出したように手を差し出した。

小さな拳から、ふいに、キラリと光る石が2つ、転がる。