薫子様、一大事でございます!


モモちゃんが隣からいなくなったことに気づいた黒猫は、機敏な動きで身体を起こすと、心配そうな目で高崎さんを見つめた。



「見つけてくださって、ありがとうございました」


モモちゃんを抱いたまま頭を下げる。


「よかったですね、また会えて」

「はい、本当によかったです」


顔をすり寄せた高崎さんに応えるように、モモちゃんも甘える仕草で頭をもたげた。


気がかりなのは、黒猫だった。

ここへ連れて来られてからも、片時も離れずにいた二匹。

このままだと、離れ離れは確定だなんて。


「明日の引っ越しに間に合わないんじゃないかとハラハラでした」

「……引っ越しでございますか?」