長い尻尾をピンと伸ばし、私を見上げてもう一度「みゃあ」と鳴いた。
「……この子は?」
「コイツと一緒にいたんだよ」
モモちゃんと一緒に?
「コイツだけ連れて行こうとしたら、必死になって後を追ってきて。結局、この事務所まで乗り込んで来たってわけ」
滝山の足に身体をスリスリ。
くるりと後ろを向いたときに見えたのは、“男の子のシルシ”だった。
それじゃ、この黒い猫は、モモちゃんのボーイフレンド?
汚れ具合を見てみても、野良猫に違いない。
私の頭の中を読んだのか、黒猫が頷くように目を細めて「みゃあ」と鳴いた。



