薫子様、一大事でございます!


「俺、何かヒドイこと言った?」

「あっ、いえ、違うんです」


自然と顔が曇っていたのかもしれない。

北見さんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。


こういうときは話題転換に限る。


「北見さんは結婚されてるんですか?」


突然の質問に、北見さんは驚いた顔をして「俺!?」と自分の胸を指差した。

そして、ヒラリと左手を空中にかざす。


「見ての通り」


薬指に指輪はなかった。


「私同様に独身貴族ですな」


同志を見つけたことが嬉しいのか、滝山がハハハと笑う。