薫子様、一大事でございます!


「縁談? DCH?」


すぐそばで聞いていた北見さんが面白そうに話に加わる。


「カコちゃん、結婚の話があったの?」


ここに来た日から、北見さんは私のことを“カコちゃん”と呼ぶようになった。

何でも、北見さんにしてみると“薫子”では長過ぎるらしい。


あだ名のようなものを付けられたのは初めてで、それが妙にくすぐったい。

呼ばれるたびに、何だかつい頬が緩んでしまう。


そして、滝山のことは、“銀さん”と呼んでいた。



「そういう話があったってだけのことです」


私には、これっぽっちもそんなつもりはない。


「断ったのか」