「こんなに存在感のある猫なのに、どこにも見当たらないのか」
「はい……」
そこで滝山と二人、大きな溜息を漏らした。
「こんなことは間違いだったんでしょうかね」
滝山が独り言のように呟く。
こんなことというのは、“あのこと”に決まってる。
「薫子様があのお方との縁談を――」
「滝山! その話はもうナシにしましょ」
「ええ、ですが……」
「私、何度考えてみても、DCHと結婚だなんて考えられないの」
「……そうですよね。はい……」
それに、NIKAIDOHがなくなってしまった今となっては、それすら望めない。
(決して望んだりなんかはしないけれど)



