薫子様、一大事でございます!


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芙美さんの勧めもあって、北見さんはこの事務所のとなりの部屋を借りることになった。

といっても、怪我が治るまでのほんの少しの間。


どこに帰るのか、何をしている人なのか、全然知らないまま。

それは、北見さんが私たちのことを深く詮索しないことへの敬意みたいなものだった。


お互い、深くは知らない方がいい。
どこかでそう思った。



「はぁ、疲れちゃったわ」

「さすがにこの滝山も疲労困憊でございます」


事務所のソファに二人揃って身を投げ出す。


モモちゃんの捜索依頼を受けてから、一週間が経とうとしていた。


相も変わらず、手掛かりもなければ、これという手ごたえもなかった。