薫子様、一大事でございます!


「悪いけど、コーヒーもらえる?」

「コーヒーですか……。私も滝山も飲まないから、置いてないんです」

「え? コーヒーがない?」


二度目の“信じられない”という顔で私を見る。


「日本茶があれば不自由は感じませんので」


ね? と滝山を見ると、その通りだと大きく頷いた。


「さっきの滝山さんの言葉を借りれば、それこそ考えられないことだ」

「そうですか?」


日本人は日本茶が一番だと思うのだけれど。

それに何より、何種類もの飲み物を置いておく余裕が、この事務所にはないのだ。


「私も日本茶が一番好きだねぇ」


芙美さんの言葉に、「そうですよね」と私が相槌を打つ。