薫子様、一大事でございます!


「あら、そうだったのかい。それならいいんだよ、慌てなくても。但し、返してくれるときには気を使わなくていいんだからね?」


分かったかい? と芙美さんは何度も念押しした。


「おやまぁ、依頼人さんかい?」


北見さんを見て、おしゃべりを止める。


「あ、いえ、依頼人さんというか……」

「おやっ、怪我してるじゃないか」


大丈夫なのかい? と北見さんの隣に腰を下ろした。

その反動でソファがグラリと揺れる。


「えぇ、まぁ……」


ジロジロと顔を見られて、北見さんが後ろへ仰け反った。


ついさっき、私たちに冗談を言って笑っていた北見さんは、芙美さんにタジタジという感じだ。