薫子様、一大事でございます!


「だって、いただいてばかりなんて……」

「いいんだよ、私が好きでやってることだし。だから、そんな隙を与える前に返してもらうと思ってね。先手必勝ってさ」

「薫子様がお返しを!?」


滝山が驚いて私の顔を仰ぎ見たかと思えば


「そんな気遣いができるようになったのですか……」


今度はハンカチで目頭を押さえて涙ぐむ。


大げさにもほどがある。

私だって、滝山にいつまでも『世間知らず』だと言われたくないのだ。


「芙美さん、実はまだタッパーに入ったままなんです」


夕べの騒ぎで、すっかり忘れてしまっていた。