薫子様、一大事でございます!


ポリポリと血色の良い方の頬を掻く。


「それでは、何か恐ろしい事件に巻き込まれたとか、そういったことではないんですね?」

「事件? ヤクザの抗争とか?」

「はい、まぁ、そんなところです」

「……」


急に真面目顔で黙り込む。


「えっ? そうなんですか? 抗争なんですか?」

「……そうだと言ったらどうする?」

「えっ……」


助けを求めるつもりで見た滝山の顔も、私同様に不安でいっぱいだった。


大変な人を連れて来てしまった。

そう思っても、もう遅い。


後の祭りとは、こういうことを言うのだと初めて知った。