薫子様、一大事でございます!


両脇は畑。

舗装はされているものの、車1台がやっとという道をゆっくりとタクシーは進んでいく。


対向車が来たらどうするのかしら。


ヒヤヒヤしながら乗っていたけれど、その心配は徒労に終わったのだった。


木のトンネルを思わせる林を抜けたところで、タクシーが停まる。

タクシーから降り立った私たちの前に、一軒家がポツンと建っていた。


周囲をぐるりと垣根が張り巡らされた古民家。

陽が低く傾きかけ、オレンジ色の光が茅葺屋根に射していた。



……ここに。


ここにお父様とお母様はいるんだ……。