薫子様、一大事でございます!


「依頼事項は済んだはずですが?」


聞いたこともないような北見さんの低い声。

私まで身を縮めてしまった。


「……そうですね」

「では?」

「あの、北見さん、ここへは私の――」

「カコちゃんは黙って」


鋭い声で遮られてししまった。


「早川さん?」

「……薫子に、代行じゃなく本物になってくれとお願いしていたんです」

「“薫子”?」


北見さんが眉をピクリと動かす。


「でも、呆気なく振られました」

「それでは、もうよろしいですよね?」


質問形式なのに、NOは受け付けない言い方。