薫子様、一大事でございます!


「え? なんで」

「いえ、その……何だか仏頂面のような……」

「悪かったな、元々こういう顔だ」


輪をかけて機嫌の悪そうな顔をする。


「そうですか? 北見さんのお顔は、どちらかというと穏やかな方かと思いますけど」

「……あのねぇ」

「はい」


その先の言葉を待つ。

けれど、北見さんはじっと私を見つめた後


「あーっ、もう俺は何をやってんだ」


髪をぐしゃぐしゃと掻き毟るだけなのだった。


「……大丈夫ですか? やっぱりどこか具合が悪いんじゃないですか?」

「別にどこも悪くないから」


顔を覗き込んだ私から、目をそむける。