薫子様、一大事でございます!


「おや? そういえばどちらへ行ったんでしょうね」

「部屋かしら」

「かもしれませんね。北見さんも相当疲れているご様子でしたから」


あの北見さんでも疲れることがあるんだ。

井上さんの尾行は、十時間近く軽々とやってのけたけれど。


「いつもはよくしゃべる北見さんですが、薫子様たちの後をつけている間は全くと言っていいくらい何もお話にならずに」

「……そうなの?」


そんなに疲れちゃったのかしら。

大丈夫かな。

部屋で倒れていたりしない?


「滝山、私ちょっと見てきてみるわ」

「そうですね。そうして差し上げてください」