薫子様、一大事でございます!


27歳にもなって恋愛経験のない女に、恋人代行が勤まるわけがないなんて思われたら大変。


「ち、違いますよ? ありますあります。恋人の一人や二人や三人……。あ、婚約経験もあります」


つい口からでまかせが飛び出した。


恋人はともかく、婚約だなんて。
大嘘吐きも甚だしい。

結婚の話が持ち上がっただけのことだというのに。


でも、ここでは必要な私の経歴。

嘘だと悟られないように、早川さんの目をじっと見つめた。


逸らさないようにグッと堪える。


「ね、知ってる?」

「……はい?」

「人ってね、嘘を吐くときに目を逸らすってよく言うけど、実はその逆なんだよ」