薫子様、一大事でございます!


芙美さんは、「一緒に探してくれるかい?」と滝山に声を掛けると、二人で家の中へと入ってしまった。


賑やかだったあとの静けさに包まれる。


突然二人きりにされてしまうと、どうしたらいいのか分からなくなる。


普段、事務所ではそうなることがあっても、慣れた場所とそうでない場所とでは、感じ方に違いがあるみたいだ。


落ちていた木の枝で、手持ち無沙汰に地面へグルグルと描いてみる。


芙美さんと滝山、早く戻らないかしら……。


そんなことを考えていると


「絵のセンス、なさ過ぎるだろ」


北見さんが横から落書きを覗き込んで、またもや憎まれ口を叩く。


「――ひ、ひどいです、北見さん」