薫子様、一大事でございます!


井上さんは、その後動く気配が全くないという北見さんの判断で、予定通り1時間で張り込みを切り上げたのだった。


「しばらく仕事帰りに張り込みを続けようと思います」

「薫子様もご一緒ですか?」

「そうですね、明日もカコちゃんと二人で」


確認の意味を込められて送られた北見さんの視線に頷いた。


「薫子様、お疲れじゃないですか?」

「大丈夫よ、全然」


井上さんの無実は、私のこの手で証明したい。


「……それでは、私は何をいたしましょう」


のけ者にされたと感じたのか、滝山が寂しそうに呟く。


「事務所で待機していてください」