薫子様、一大事でございます!


「そうですか?」


あんなに優しそうな顔をした井上さんが、恋人の星野さんを裏切るとは考えられないもの。

北見さんは、絶対に考えすぎよ。


そう思ったものの、北見さんの言うことも理解できなくはない。


会社から自宅までの1時間程度の調査と、井上さんに対する私の主観で、星野さんが納得するとも思えない。

念のため、あと1時間はアパートに張り込むという北見さんに従うことになったのだった。



アパートの向かいに立つ電柱に、二人並んで身を寄せる。


時に、肩に手を置かれ――


「ひゃあ!」


時に、腰を引き寄せられ――


「ひゃあ!」