薫子様、一大事でございます!


「そ? なら、これも探偵の仕事の一つだと思って辛抱してくれ」


……“探偵の仕事のうちの一つ”。


繋いだ手をもう片方の手でパンパンと軽く叩き、井上さんを指差した。

調査対象を注視。
そう言っているようだった。


そして、井上さんはその後、どこへ寄るわけでもなく自宅アパートへと帰ったのだった。


やましいことのこれっぽっちも感じない背中を見てホッとする。


「やっぱり何事もなかったですね」


浮気はしてないんだわ。

怪しい行動なんて何一つなかった井上さんの帰路を思い出して、一人頷いた。


「一旦家に帰ってから出掛ける可能性もある。それに、今日一日だけで判断を下すのは早過ぎるぞ」